うちの親のお店の批評をしようと思う話

私は、親との関係があんまり上手にとれていなかったんですね。

母は、ものすごく出来た人でした。
ただ、父が……。
まあ詳細は、今更蒸し返さなくてもいいですかね。よくある話かとおもいます。

さらに、母は「人間として出来ている」なので、私が父に足引っ掛けられてこけて泣こうが、「笑顔が足りない」という理由で深夜1時から3時間詰められようが、「父はああいう人だからもうほっとくのが一番」というスタイルをとっていて。
確かに、今考えると母と私でタッグ組んで「ええかげんにせえ」と吠えていたら、すねて逆上して何するかわからない、というところはありましたので、賢明な判断だったと感じます。
ただ、子供の時の私は、「誰も助けてくれない、味方がいない」と感じていました。
ですから、私のほうがある程度観察眼を得て、人間としてそこそこ出来上がるまでは、ちょっと大変だったなあというのが本音です。

父を、毒親……という呼び方をしていた時期もあるのですが、うーん……今となっては、果たしてそれは、どうでしょうね。
少なくとも悪人ではないと思っています。
お互いにお互いの立場の者として未熟だった、という言い方はできるかもしれません。

本日は、そんなうちの両親の経営する小さな居酒屋について、私の目線から、いいとこ悪いとこを掘り下げてみようと思いまして。

好きじゃないところもあるけれども、人間として評価できる部分もやっぱりあるので。悪い人では決して無いですから。

まず、この店内を見てください。
なんてエモーショナルなのでしょうか。
この、今っぽさに媚びない感じは、評価できるのではないでしょうか。
お客さん、ご近所のお仕事帰りの方や、ご家族が多いです。

ただやっぱり若い人からすると、ちょっと小汚いというのはありますね。
あとマスターがうるせえ。たまに口を挟んでくる。うるせえ。微妙に話かみあってねえ。
ただ、オカン(おかみ?)が筋を戻しますので安心してください。
うちの親父うるせえ。マジうるせえ。ちょっと黙れ。

正直、もう年なので今更お客さん増えても困るというところもあって、のんびりと経営しているようです。
このご時世にインターネットがまったくわからないんですよ、うちの親は。
なので、新規営業というよりも、ご近所付き合いでいらしてくださる方、通りすがりにふらっと入ってくださる方をすごく大事にする、というスタイルです。
私は、「彼らの性格を鑑みるに、自分に非常に合ったスタイルであり、ちょうどいいところに落ち着いたな」と感じます。

一応「名物」と銘打っているものが昔からひとつあって、それは「蒸し鶏」です。
真新しくもなんともありませんが、まあでも子供の頃から食べていますがうまいですよ。そりゃうまいでしょう、蒸した鳥ですから。
タレがけっこういいですよ。タレは作ってるでしょう流石に、訊いたことないですけど。えっ作っとーやんな? 作ってるということにしましょうよ。

阪神淡路大震災のド直撃を経ているんで、けっこう苦労あったんですよ。
うち、震災からあと、結構びんぼーだったもの。
でも今もやってる。すごくほそぼそとですけれど、やってる。

若い人にうける感じのお店ではないんですよ、たばこくさいし。きちゃないし。
やっぱりお客さんによっては、子供ちゃんとか赤ちゃんいるのに吸う人だっていますからね、たばこOKっていうことは。
あと、マスターうるせえし。
ほんとにもうまじうるせえ。マスターうるせえ。うるせえマスター。うるマス。

でもやっぱり、好きで来てくださる方がいらっしゃるんですよね。
落ち着くって言って。
早目の時間にお子様もご一緒にご家族でとか、お一人でお仕事帰りにという方もおられるし、私が幼稚園のころつまり創業当時から馴染みのお客様もおられます。

うちの親、なんにもすごいところ、ないんですよ。
能力も高くないですし、特別なスキルなんてない。いわゆるコミュ障ですし。
でも、ここが好きだって言ってきてくださる方が、わずかであってもいらっしゃる。

いろいろ考えてみたんですけれど、うちの親を見ていて、やっぱり「不器用であってもまじめに、誠実にやってきた」以外の長所、見当たらないんですよ。

ずるいこと大嫌いで、お天道様に恥ずかしいようなことをしたら大泣きしたぐらいじゃ許してくれないような人で、意固地だしプライドばっかり高くて謝るということができない部分もあるし、自分の中の古臭い正義ばっかり信じて腹立つこともいっぱいあったし、オトナな人では決して決してないけれども、とにかく、人間としてずるい・ゲスいことは絶対にするべきではない、という人なのは間違いないんです。

私と同じような不器用さを持っている、さすが親子ですね、そういう人。

小賢しい経営で小銭稼いだりとか、絶対出来ないんですよ。おばかちんだから。
好きな女の子に告白したらふられたっていう理由で定時制高校をやめて、それで学歴中卒なんですよ、うちの父。
おバカエピソード、なんぼ話しても尽きないですよ。
おバカじゃないエピソードだってありますよ、ちゃんと。父方の祖母は、自分で首をつって死にました。自分の母親が自殺って、なかなかの衝撃でしょうし。大変だったと思います。

でも子供3人育て上げるだけの店がやれた。

父親はもう私にそっくりすぎてぶつかったので、自分に似ているからこそ、これは研究して、ある程度は踏襲しながら、改善したもので私もトライしていかないといけないなって思ったんです。

なんだろう。
教科書どおりに生きられない父親だった。いやまだ生きてますけど。
で、私は父がすごく嫌いだったけれども、同時に自分が父にすごく似ていることも自覚していて、たぶん無意識にシンパシーと同族嫌悪があったのかなあ。
今私は、うちの母みたいなおっとりとしたやさしい性格の夫と暮らしてますね、父が母と一緒になったように。

店としての改善点を出し始めるときりがないぐらい全く優秀でないお店なんだけれども、なんかこう、「うちの親がやる」っていう条件下においては、なるほどこの状態が完璧であり完成形だな、といえるお店なんです。

なんかねえ、なんだろう、やっぱり親子って似るんですね。
遺伝子ってすげえや。

深く関わりたいとは、今でも思えないですけれど。
でも、たまーーーにネットでうちの親の店のエゴサーチをして、口コミが増えてたりしたら、教えていますよ。嬉しそうによろこぶから。
叩かれるほど有名じゃないから変な口コミは入らない。

ホームページとか作ってあげたら!? ってたまに言われるんですけれど、ホームページを見て来るようなお客さんはフィットしないんですよ、うちの親には。
本人がウェブまったくわかってないから、手に余る。それを本人もわかってる。
それより、店に飾ったり配ったりする紙のチラシ作ってあげるほうがよろこぶ。絶対。

だからでしょうね。
「こうじゃなきゃホンモノじゃない!」という意見が嫌いで、
「こういうやり方、こういうやり方、いろいろ。要は受け取る側のニーズ」っていう意見が好きなのは。

小さいときから、見てきたからね。

もう本当に、人それぞれですよ。
私は、ウェブ主体でやっていくのが好き。出不精だから。
全員にフィットするのはムリですよ。
でも、「あなたにこそ」っていうつもりで、誠実に、大事に、まじめにやっていたら、ほそぼそとかもしれないけれど、やっぱり、好いてもらえる時はある。

背のび、しないことですよ。

大きく見せよう、強く見せよう、すごい人だと思われよう、それじゃ威嚇ですもん。

お客さんは、敵じゃない。お客さんは、来てくれる人。好いてくれる人。味方です。

なんかね、親の姿勢をみて、そんなことを思いました。

じゃーーーーねーーーーーー。