01.アップルジュースの歌

アップルジュース かごの中 ゆれる
夏の終わりのせいくらべ
真っ暗闇は日がのぼっておわる
灰色景色の晴れ模様

後ろを向いたら長い髪
あの子の腕には傷だらけ
「あたしを振り落とさないでね」
肩の後ろからそう言った

アップルジュース かごの中 ゆれる
君は後ろでそれ見てる
真っ暗闇は日がのぼっておわる
灰色景色の晴れ模様
後ろを向いたら長い髪
あの子の腕には傷だらけ
黒が好きって言ってたけど
白が似合うと僕は思う

アップルジュース かごの中 ゆれる
届く気がして手を伸ばす
夕焼け空が夜になって終わる
灰色景色の晴れ模様

アップルジュースのあの子は今も
どこかで元気でいるのかな
誰も知らないような歌とか
どこかで口ずさんでるかな
二言目には死にたい
にじんだままの境界
かすれて消えたグッドバイ

優しい嘘と崩壊
泣きそうな声に包帯
かすれて消えたグッドバイ
かすれて消えたグッドバイ

かすれて消えたグッドバイ

アップルジュース かごの中 揺れる

02.旧校舎

きしむ廊下の隅
西向きの窓に
目をやられないように
つむる

くぐもったにおい
もう誰もいない
土足にへばりついた
リズム

昼から登校のあの子
ゆるりと回って
夏服 ゆれた
影さえ透明だ

あの子と旧校舎
今だけ笑った
ホコリまみれの
光 光 光
2階に登って
ナイロンギターで
歌を歌おうか
そういうオバケになろうか

見つかるだけ

繰り返す

自ら暴走をあの子
ずるいよ だって
約束してた
雨なんて想定外

壊れた旧校舎
秘密で笑った
あの子と僕の
二人 二人 二人

昼から登校のあの子
くるりと回って
夏服 ゆれた
影さえ透明だ

あの子と旧校舎
今だけ笑った
ホコリまみれの
光 光 光

03.儚くなんかない

いち、に、さん、し
ガチャ目を凝らして 極を数えた
こっち あっち
髪は黒かった 一重が覗いた

シーソーに乗ったかい
ブランコはどうだい
カマキリを掴んだ
挟まれるんじゃない

いっそ祈ったさ
だけどまた交代
ノコギリの世界は
儚くなんかない
意識 最新
心を壊した 君が叫んだ
もう1階に誰もいなかった
誰もいなかった

シーソーに乗ったかい
ブランコはどうだい
カマキリを掴んだ
挟まれるんじゃない

いっそ祈ったさ
だけどまた交代
ノコギリの世界は
儚くなんかない

04.ひまわり

錆びた弦が鳴る
歌うだけで歌になる
僕ね ほんとはさ
ひまわりになりたかった

でもね 先生がね
無理ね って言うから
僕ね クレヨンで
画用紙に描いたんだ

ひまわり 大輪のひまわり
ひまわり だいだいのひまわり ひまわり

錆びた弦が鳴る
うるさいなあ って君が言う
僕ね ほんとはさ
あなたに歌ってた
でもね 暗くてね
上手に伝わんない
だから クレヨンで
画用紙に描いたんだ

ひまわり 大輪のひまわり
ひまわり だいだいのひまわり ひまわり

さびたげんがなる
ぼくね ほんとはさ
でもね でもね
だからクレヨンで画用紙に描いたんだ
(ダメなんだ あのババア 僕のこと 嫌いなの
授業中 当てつけで ぐちゃぐちゃに
お前のせいだって)
(ただの暇なガキ 黙ってろ)

(君は言う 気味悪い さりげなく 去ってゆく
ひとりぼっち 殴るように 泣きながら
どうせ誰も見ないだろ)

(ひとりぼっちにしたくせに 筆記用具奪ってくるなよ
やっと上手に描けたのに 血だまり)

05.アレ

信号 糸 朝 匂い
踏切 サイレン 光
磨り減った神経が
感じ取るもの

横断歩道 嘘 嫌い
指きりげんまん 誓い
磨り減った神経が
感じ取るもの

おっかない 棒持って
アレがやってくる
蜃気楼 纏って
アレがやってくる
声がする ランララン
信号 糸 朝 匂い
踏切 サイレン 光
磨り減った神経が
感じ取るもの

黄色い猫 赤い目
空は綺麗な色
磨り減った神経が
勘違いした

おっかない 棒持って
アレがやってくる 
蜃気楼 纏って
アレがやってくる
声がする リンルラン

「リンランホイラン
リンランホイ」
信号 糸 朝 匂い
横断歩道 嘘 嫌い
黄色い猫 赤い目
心臓 今 ただ ただ

おっかない 棒持って
アレがやってくる
蜃気楼 纏って
アレがやってくる

カンカンと 笑って
アレがやってくる
リンランホイ リンランホイ
アレがやってくる
声がする
ルンリラン

06.だましてにげる(再録)

いっぱい春を見て
ひとに憧れて
冷たい心で
やさしくなりたかった

「信用できないな」
誰か言ってたよ
返事はしないで
うちに帰った

隠せなかった
空っぽの言葉
やさしくなりたかった
それだけ
いっぱい春を見て
まねはうまくなった
だけど ゆがんでった
ヒビは 増えていった

本当の事は
何も言えなかった
あなたをだました
くしゃくしゃに笑った

隠してあるのは
少しの涙と
真っ黒くなった
らくがき
夜になったら
魔法がとけた
信じないで

にじんだままの境界
さよなら 聞こえないかい
ずっと夢だった
やさしくなりたかった

もう壊したくなんかない
本当はたくさん泣いた

あなたをだまして
逃げるつもりだ

許さないで

さよなら
聞こえたかい

07.寛解待ち

世界はついに
あの子をやった
箱のなかで

ここはちょっと
あの子には
溢れすぎてた

あの子の病気は
治るのかなあ
あの子はただ

寛解待ちのマイ・ガール
今朝 ひまわりが咲いた
寛解待ちのマイ・ガール
あの子とタネをまいた 花が
枯れ葉もゴミも
あの子のほうへ
吹き溜まってく

それでもふいに
髪を揺らして
あの子は笑った

あの子の病気は
治るのかなあ
あの子はただ

寛解待ちのマイ・ガール
うなだれたひまわりが
今年もタネになった
二人でそれをまいた
曖昧な記憶の中で
ハイファイな孤独を掲げ
デタラメでクズなあの子を
僕だけが知っている

あの子の病気は
治るのかなあ
あの子はただ

寛解待ちの マイ・ガール
あの子とタネをまいた
あのひまわりは咲いた
凛と 確かに 咲いた

寛解待ちのマイ・ガール

寛解待ちのマイ・ガール