01.8月32日

ここはいつも
なにも咲かない
だから花は
なにも散らない

ぼくとあの子
今日はおしまい
少し焼けて
空になる

夏のすきまの女の子
風の向こうにいたあの子
ざわめく川のキラキラを
一生懸命 見ていた
「8月32日に
私はここにいるからね」
あの子はウソつかないんだ
あの子はウソつけないんだ

君が今日も眠るために
夏休みが終わる前に

君を 探す 探す 探す

どうして?
夏のすきまの女の子
ひなたの影を追い越して
ちぎれた雲が消えるまで
一生懸命 追ってた

ギザギザの腕 つかまえた
かなしい歌を 歌ってた
ここは何も散らないから
ここは何も散らないから

そして8月32日は

02.悲しいレプリカ

焦燥 たどると
そこに ひずみ
足の裏をおびやかす想像
冷たい感電死
散文詩

「もう誰も私を
串刺しにしないよ」
でもここは悲しいレプリカ
こんな日は歌うよ
繰り返すシナリオ
何度でも死んでいいから
ねえ
ドアの音
階段を上る音
怒鳴る男
心臓を弾く糸
もう息はしない
生きたくない
目が閉じない
何が怖い

もうあれは昔と
置き去りにした嘘
「あの子」と名をつけたレプリカ
傍観者 プライド
繰り返す痛みを
すり替えて
君のにした

偽物の光を 積み上げるシナリオ
ああ 君は 悲しいレプリカ

03.がたがた

僕の心はどうかして
3000回も交差して
やっと君の涙を考慮した
君の涙に後悔した

許されることはないね
だって
繰り返す言葉さえ
最低
狂わせることばっかで
泣いて
もう止まらない導火線
切り捨てたい思いだけ
そして君の涙も嘔吐した
君をどこかに落とした

許されることはないね
なんて
詐欺まがい 誤魔化して
吐いて
惑わせるやり方で
上手いね
許されることはないね
だって
繰り返す言葉さえ
最低
狂わせることばっかで
泣いて

04.うそつきのほたるいか

あなたとは いつも雨
降りすぎて 帰れない
笑えない 冗談で
笑った顔がすき

泣いたのは 一度だけ
笑うのに 必死だね
うそつきの ほたるいか
おかしな例えだな

光り 光に惹かれ誘われてつかまった
ふりをして振り回されてくれてありがとう
ありがとう

嫌われちゃうのが悲しくて
つい逃げちゃうんだ
ごめんね
傷つけちゃうのが怖くって
つい消えちゃうんだ
ごめんね

繰り返すって悲しいね
なおらないって切ないね
繰り返すって悲しいね
なおらないって切ないね

あなたってやさしいね
でも僕は 本当のことが聞きたいんだよ
ぼくのわがままかな

光り 光に惹かれ誘われて捕まった
振りをして振り回されてくれてありがとう
ありがとう
疑わなかったらよかった
もっと真に受けてもよかった
疑わなかったらよかった
もっと真に受けたらよかった

繰り返すって悲しいね
なおらないって切ないね
繰り返すって悲しいね
なおらないって切ないね

わかってるのに

うそつきのほたるいか
やっぱりおかしいな

05.WRITTEN
(スインギン’モルモットと保健室ガールのテーマ)

彼女はリッツン
何をも恐れぬねじれた女の子
彼女はリッツン
架空の話の上で生きてる子

まわりまわるレコードは保健室
ジンジャーエイル
レモネード
(ノンアルコール)シャンディ・ガフ
彼女はリッツン
MDケースに描いた
りんごの絵
彼女はリッツン
お気に入りのトラックは
音飛び

彼女はリッツン
ピアスは開けない主義さ
いまのとこ
彼女はリッツン
しおりの向こうの世界は
知らない
白衣のモルモットが保健室
お肉は食べない
小松菜のスモーカー

彼女はリッツン
ほんとの名前は
出席簿15番
彼女はリッツン
架空の話の上で生きてる子

06.ひとりぼっちのねずみ

よけいなことして 怖がらせてごめんね
ぼくがいたから
ぼくがいたから

よけいなことして 怒らせてごめんね
ぼくがいたから ごめんね
ごめんね

ひとりぼっちの ねずみ
あした 天気になるかな
君といたくて 君といたくて
ドブから出てきた
ひとりぼっちの ねずみ

よけいなことして 怖がらせてごめんね
怒らせてごめんね 悲しませて
ごめんね ごめんね

ひとりぼっちの ねずみ
あした 天気になるかな
ひとりぼっちの ねずみ
あした 天気になるかな
お日さま出るかな

君といたくて 君といたくて
ドブから出てきた
ひとりぼっちの ねずみ

07.このざま

読めない空気読もうとした
足りないパズル解こうとした
きみどりの目で空を見たら
黒い子供が遊びに来た

いてはいけない子供なのさ
聞いてはいけない声なのさ
だから誰にもひみつなのさ
あれとまた出会ったことは

お外はこわいから
おうちにいようね
心がバレるから
静かにしようね
ザリガニ。本から虫。もちごめこ。ペースト状の顔。ダンボール。部屋に生えた万能の黒い子供の下から漏れるガソリンの粉。瓶。トイレットペーパー。カマキリ。まだ大丈夫。まだ大丈夫。まだ大丈夫。ねこのひげ。無数の黒い子供の下から漏れるガソリンの粉
お外はこわいから
おうちにいようね
心がバレるから
静かにしようね

”もうよしなよ
がんばったよ
ゆびきりげんまんしたけれど
もういいんだよ
もういいんだよ
もうよしてよ
お願いよ”

もう きこえない

08.ぶんぶんごま

あの子は上手にお話できない子
たくさん たくさん ぶんぶんごま 持っている

練習したのに 上手になったのに
誰にも 言えなかった
「ぶんぶんごま まわそ」

「上手にできたら
誰かが見てくれるかな?
明日は 誰かと
お話できるかな」
さびしいあの子は 壊れたり 治ったり
いくつも いくつも ぶんぶんごま まわした

あの子は上手にお話できない子
みんなのふつうと ちょっぴりだけ 違った子

神様 どうして あの子だけ 傷だらけ
誰にも 見えなかった
ぶんぶんごま まわす
「上手にできたら
おともだちができるかな?
明日は 誰かが
遊んでくれるかな」

練習したのに 上手になったのに
誰にも 言えなかった
「ぶんぶんごま まわそ」

ぶんぶんごま まわそ

ぶんぶんごま まわそ

09.たがいちがい

「本当は私が居たって意味ないの」
散らかる落ち葉とレンガ道
足音のすきま 言っていた

大げさな赤いストールの女の子
セミの抜け殻がひとつだけ
とまったまんまの さくらの木

本当にあなたが居たって意味なくて
誰の記憶にも もう なくて
ほとんど 居ないとおんなじで
つまづいた右足 落ち葉をばらまいて
いそいで掴んだあなたの手
あやまちだらけの 女の子

遠回り 見下ろす川辺の枯れた草
すずめがたくさん鳴いていた
金網フェンスが揺れていた

互い違い

いつだっけ 全消ししといた
見つかって フラッシュバック状態
居座っていた 腐乱した遺体
静かにして いないいないいないいない ばあ
他害 自害

大げさな赤いストールの女の子
あやまちだらけの 女の子
飾る花もない そういう子

本当に あなたが居たって意味なくて
誰の記憶にも もう なくて
ほとんど 居ないとおんなじで
 
互い違い
他害自害

10.私もあしたを探してみるよ

ひろった落ち葉とおおきなマフラー
こぼした孤独は幼いまんま
もうすぐ もうすぐ 夜が来るから
窓は必ず閉めておいで

「私もあしたを探してみるよ。
ちぎれた思いを見つけて抱くよ。」
それきり もういいかい
ねえもういいかい

ぼくらは沈んでたかった
誰より澱んでたかった
わけじゃない
わけじゃない
わけじゃない
わけじゃないのに のに
「私もあしたを探してみるよ。 
ちぎれた思いを見つけて抱くよ。」
水面に 浮かんで 見えなくなって
消えてく あの子が 消えてく