syrup16g live report [ 2004年1月17日 live(My songツアー)@BIGCAT ]

LIVE REPORT

[ 2004年1月17日 live(My songツアー)@BIGCAT ]


 この日、朝起きましたらなんと雪が結構な量降っておりました。
 降ったのは朝だけでじきに止んだとは言えたいへん寒くなった大阪は心斎橋、BIG CATに 久々にsyrup16gがやってきました。

 最後に行ったライブが、少し嫌な思い出の残る「ロックロックこんにちは」(at ZEPP OSAKA)だっただけに 今日は楽しみたいねえと同行のひとと話をしているうちに、会場は煙り、客席の電気が暗くなり、シロップ16gの登場となりました。
 暗がりの中で位置についていく各メンバー。
 私は、彼らの様子をマジマジと見ずにはいられませんでした。


 キタダさん、前髪、ながっ



 中畑さん、Tシャツが針金ハンガー柄



 五十嵐さん、服、ピッチピチ




 なぜ、登場の時点で私は笑いをこらえなければならないのでしょうか。

 そういえば、アー写の中畑さんは黒髪でらっしゃいましたが、この日の中畑さんは また元通り、金髪でらっしゃいました。


 いつもどおり無口に定位置につき、五十嵐さんがおもむろにギターを奏でだして始まった一曲目は シロップ屈指の名バラード、「Reborn」。
 一部ギターの明らかな失敗があったものの、今日は声もとてもよく出ていてナイス五十嵐でした。 中畑さんの熱いドラミング、キタダさんの安定したベースと合わさったそれに涙すら誘われそうになりました。

 続いて、今回発売された「My song」より「夢」。
 あの絶妙な響きのイントロが始まった瞬間に会場は静まり返り、物悲しいこの唄にみんなが聞きほれました。 目立つミスは特になく、まさに「聴かせるライブ」といった感じの一曲でした。

 曲と曲との間、風邪でもひいているのでしょうか、何度も何度も鼻をかんでいた五十嵐さん。
 その様子があまりに面白くて観客さんみんながクスクスと笑うと、五十嵐さんは気まずそうに、

「……鼻ぐらい……かむだろ……」

 と、半笑いでいいました。


 そりゃあ一般人は鼻ぐらいかみますが、多分舞台上で鼻かむのはあなたぐらいです。


 鼻もかみ終わり、ギターをしつこいぐらいチューニングして始まったのは あたらしめのナンバー「パープルムカデ」。次々と変わってゆくリズムに翻弄されつつ、 ビックリしたのは照明です。恐らくライトにムカデ型に切り抜いた 板か何かをあてたのでしょう、シロップの後ろにでかでかと浮かび上がったのは白いムカデ型の光でした。
 今にも這い出してきそうなそれが、パープルムカデの曲をより引き立てました。

 そのままのノリで4曲目、「Everything is wonderful」。
 この曲をライブで聴くにあたって楽しみなことといえば「キエエエエ!」ですが、キエーは進化しました。

「エビシンギズ ワァンダフゥ~、
お日様笑ってるぅ~ううう~、

ギェえアアアアア!


 超、怖かったです。


 それが終わり、そのまま始まった曲はベース音とドラムの雰囲気からして「タクシードライバー・ブラインドネス」。 だけれども、明らかにギターの音がおかしい。
 なんと言うかやたら変だったのでございます。これには五十嵐さんも一度演奏を止め、チューニングをし直して 再度弾き始めました。
 私には、ギターがおかしいのをチューニングのせいにしているようにしか見えませんでしたが、 五十嵐さんもプロのギタリストです、そんなことはないでしょう。多分。
 改めて、「タクシードライバー・ブラインドネス」。
 トレモロアームを使った演奏はまるで流れるようでした。

 いつだったか定かでありませんが、多分この辺で、演奏が終わり汗を拭いて さあ次の曲を、と五十嵐さんがピックをつまんだその時、静かな客席から突然
「そのピック下さい!」
 という男性の声が響きました。
 聞き取れなかった五十嵐さんは少しムッとした顔で
「ああ? 何? ピンクマラソン?
と意味のわからないことを言いました。

 ありえない聞き間違いであることを忘れるとしても、若い男性が突然ピンクマラソンなんて叫ぶはずはないことに彼は気付けなかったのでしょうか。

 やがて「……ピック?」とようやく理解した五十嵐さんは、自分のピックをそちらに ぶん投げたのでした。

 それから、どこで言っていたか忘れてしまったMCをここでまとめようと思います。
 まずこれは最初のほうだったような気がするのですが、

「うぅぅ。さむい!!」

 そう、したたる汗を拭きながら五十嵐さんは言ったのです。「寒い」と。
 皆様、おぼえておいてくださいませ。これが五十嵐節です。

「……さむい……。ほんとはね、すごい、運動したいんですよ。動き回りたいんですけどー、 この、このホラ、ななめのね、(マイクスタンドの斜めの部分を一生懸命あらわしてらっしゃいました)これがこう…… 俺を……拘束してだね。……動けない。」

 いいえ、私の知っている五十嵐さんは懸垂が二回以上できないし長距離を走るのが嫌いなはずなんだ。
 だから、運動したいなんて思わないはずなんだ。

「……実は歌いたくなくて音楽やってるんですけど……歌っ……、 今度にはギターをもう一人入れて4人編成でやろうかと

 その言葉に観客みんなで爆笑すると、中畑さんが茶々を入れるように、

「増えたらもう歌わないの?」

 この問いに五十嵐さん、

「あたりまえじゃん!!!!」




断言ですか。


 次のライブで木下さんあたりが加わっていないか、心配です。


 さて、MCも書き終えましたところで、次の曲は「生きたいよ」。
 今回のライブでは聞かせる曲と動かす曲をふんだんに織り交ぜ、なんとも巧みなセットリストとなっておりました。 その中でも「聞かせる」部分と「動かす」部分が二つ合わさったようなこの「生きたいよ」、 最後の盛り上がりの中畑さんの暴れっぷりがシャレにならなく、最高でした。

 それが終わるとまた鼻をかんでいました

 その後おもむろにキタダさんがベースを鳴らしだしました。
 最初「遊んでいるのかな?」と思っていたのですが、それは聞き覚えのあるフレーズでした。ドラムが加わり、 五十嵐さんが多分アドリブで歪んだギターをかき鳴らしまくって、その曲のイメージは残しつつも それはCDにないセッションになりました。
 かなりかっこいいそれが一定時間続いた後、五十嵐さんは長く「イェーーーーー!!」と歌いだし、 始まったのは「Sonic disorder」。
 この曲はもう、とにかくベースですよね。シンプルながらもかなりベースがかっこよく、 「マキリン万歳」と言ったところでございました。

 続いて定番ナンバー「神のカルマ」。
 これもベースとドラムがかなり強い一曲だと思います。中畑さんとキタダさんの コンビネーションは必見でございます、ぜひともライブをご覧下さい。

 そのノリで続くのは「回送」。
 オリジナルの音源ではピコピコした感じの打ち込み系チューンになっておりますが、 今回のこれは歌詞こそCDバージョンだったものの、昔ライブで初聞きした あの感じとほぼ同じでした。
 コードの感じがなんともかっこよく、きれいで、「シロップ」といった感じでございました。

 またチューニングをしつこく繰り返して、次に始まった「ex.人間」。
 今日の兄貴の「ハァーア。ハァーア。」は バリバリにさえていました。

 わりとサラッと歌い上げた神のカルマ~ex.人間から一転、今度は突然激しく「coup d’Etat」~「空をなくす」。
 「空をなくす」では、「塾から帰るガキの」を「塾から帰るおこちゃまの」、 「車の移動に酔った」を「地球の自転に酔った」と歌詞を変えてらっしゃいました。

 それが終わると、先ほどのピックのお客さんでしょうか、突然「はい、次!」と叫ばれました。 それを受け、中畑さんが口を開きました。

「おめーが言うな。」

 冗談っぽく言っていましたが、目が笑っていませんでした。
 私は、「ああ、中畑さんも怒ることがあるのだ」と思いました。


 ここで、五十嵐さんが早口にしゃべりだしました。


「はい、次で最後の曲!」

 会場が「えええ!」と声をあげる暇もなく、五十嵐さんはかなりの問題発言を すごくおおきな声でかましてくださいました。




「もう二度と来ない!



エェェー。





 その瞬間会場に湧き上がる反感の意。
 思った以上に会場が沸いてしまったのか、五十嵐さんは慌てた様子で言いました。

「あはは、うそうそ……だって寒いんだもーん」

 ですが静まらない会場。
 たぶん五十嵐さんは困ったのでしょう。
 真の問題発言は、ここからだったのです。おさまらないざわめきにいくらかかき消されていましたが、 私は聞き逃しませんでした。









「う・そ♥」








 もう、「ぎゃふん」としか言いようがございません。私の負けです。
 私は悲しいのです。30歳にもなった、ヒゲでしかも左足がよくあがるおじさんに こんなにも萌えている自分が悲しいのです。


 そんなこんなで始まったのは「My song」。
 やや歪んだエレクトリック・サウンドでの演奏にアレンジされていました。やさしくも悲しい歌詞と はかないメロディに涙する方も少なくはなかったでしょう。
 私でございますか? 私はさっきの「う・そv」のせいで集中できませんでした。

 そうして、彼らいわく「最後の曲」を演奏し終え、彼らは帰ってゆきました。
 もちろんおいそれと彼らを帰す私たちではございません、当然のように手拍子は響き渡ります。
 そしたらけっこうあっさり出てきました。


 そして五十嵐さんの怪しい響きのギターから始まった、「もったいない」。
 これをまたライブで聞くことができるなんて、それこそもったいない。身に余る幸いと言ったところです。 でも代わってあげません。もったいないけど代わってあげません。ご了承ください。

 続いて「イマジン」。個人的な話でございますがこれは私がすごく好きな曲で、ぜひともライブで聴きたいと 思っておりましたのでたいへんうれしく聴きました。
 空はこの上、のくだりの悲痛なことと言ったらなく、ドラムに囲まれると暴れん坊に大変身の中畑さんも えらいことでした。

 そのまま「シーツ」。ですがここで少しトラブルが発生。
 五十嵐さんが、「痛みこらえて 痛み殺した」このフレーズを最後に歌わなくなってしまったのです。 正確には「歌えなくなってしまった」のでしょうか、しばらく伴奏のみが流れつづけることになりました。
 サビに入る前あたりでおもむろに五十嵐さんが演奏をとめ、もう一度頭からやり直すことに。
 後の話によると、泣きそうになって歌えなくなったとのことでした。

 そのまま彼らはハケて行きましたが、私といたしましてはもうひとがんばりしていただきたいところです。
 お客さんは誰も彼もそう願っていたようで、二度目のせかし手拍子が鳴り響きました。

 しばらくそれが続いた後に、キタダさんと中畑さんがまずスッと現れ、その後 拝むように両手のひらを合わせながらヘコヘコと出てきたのは五十嵐さん。

 何か見たことあるなこのアクション、と思っていたら藤原基央のそれでした。

「すいません、ちょっと泣きそうになってしまいまして」

 と頭をかきながら五十嵐さんは言い、もう二言つけくわえました。

「人には辛い過去があるんですね~。そうしてみんな、生きていくんですねぇ~。」

 呟くように吐き捨ててから始まったのは、「生活」。
 すっかり定番のこの曲、会場は大いに盛り上がり、五十嵐さん側の前のほうの方などは 狂ったように拳を振り上げておられました。

 さらに続くのは「明日を落としても」。
 この曲をライブで聴けるとは! と、嬉々として浸りきっておりました。
 終始単調気味のこの曲がなんともシロップの香りを引き出していて、なおかつライブが終盤に差し掛かり ややくたびれてきた体にジワジワとしみ渡ります。

 そして「汚れたいだけ」。
 おさえめなドラムが突然激しくなるそのさまは必見です。間奏でのベースソロ(と言っていいのかしら)も さすがキタダさん、安心して聴けるものでした。


 二度目のアンコールを終え、3人はまたハケていきました。
 私は「これでお開きかな?」と思っていたのですが、会場は3度目の拍手を始めました。 これ以上呼んで、五十嵐さんが死んでしまいやしないかと心配ではありましたが、 私の好きなキックザカンクルーも「行けるなら行っときな!ゲッタチャンス!とか言っていることですから、私もその拍手に参加しました。

 すると、しばらくしてからトリプルアンコールが成立!
 まずキタダさんと中畑さんが出てきました。
 ドラムのところまで行った中畑さんは、

「あ」

 と言いました。
 会場からは「え?」という声などが少しあがるも沈黙が流れ、中畑さんはと言うとそのまま10秒間ほどかたまった。


「…………」
「…………」
「…………」



「…………みず、わすれちゃった……」





しょうがない子ね!




 そんな中畑さんは、口でドラムのフレーズを口ずさみながら着席し、ドラムソロを叩き始めました。 果てしなくかっこいいそのドラムソロに、会場は大盛り上がり。中畑さんオンステージといったところです。
 そのノリで登場してきた五十嵐さん。キタダさんに何かを耳打ちし、そのまま定位置へ。
 ドラムソロにはいつしかベースが加わっていました。

 五十嵐さんは、脇にいつもいらっしゃる金髪の方がギターを差し出すのを断り、代わりにスタンドから マイクを取り外しました。
 エ、何をするの? と恐らくたくさんの方が不思議に思ったろうと思います。何をやったとお思いですか。

 マイクを持ち、酔っ払いのような足取りでフラフラと前にやってきた五十嵐さん。
 ドラムに合わせ、





「イエェーーーー!!!!」




 自分が言った「イエェー!!!」と同じだけの拍をおいて、再び






「イエェーーーー!!!!」







 間違いありません、これ、コールアンドレスポンスです。
 五十嵐さんがコールアンドレスポンスしてます。



 私の体内に水色の風が吹き荒れたのは言うまでもありません。



 そして信じられないのはその後です。









ハンドマイクで、落堕、うたってるーぅ。







 もう、なんと言いましょうか、助けてください。




 ひざまずいて・うずくまっての「寝不足だって言ってんの」は圧巻でした。
 多分、笑いをこらえるのに精一杯で聴くどころじゃなかった方は私以外にもいらっしゃると思います。
 ギターソロに入ろうという頃におもむろにギターを抱え、ソロ以降はギターも演奏していました。やっぱり あの人ギター弾いてないと、ただのちょっと変わったおじさんですね。

 五十嵐ハンドマイク事件で会場は沸点をも通り越し、バンプライブのあの大騒ぎに負けない大盛り上がり。 そのテンションのまま「真空」をやり始めたからたまりません。
 五十嵐さん前などは、もうわけのわからない状態に。比較的静観派が集うキタダさん側でさえ、 拳を挙げる方が少なくありませんでした。私はといえば、圧倒されて体も動かぬ状態でございました。


 「真空」が終わり、すっと会場が静まったかと思うと正真正銘最後の曲、「She was beautiful」。 落堕だの真空だのを続けざまにやった、混乱と言っても過言ではない盛り上がりをバッチリと丸くおさめる 素晴らしい選曲でした。
 間奏でちょっとディレイかけすぎ感はありましたが、それでも文句なしの幕締めです。

 こうして1月17日はおわりました。


 今回、何と言ってもセットリストが個人的に最高で、始まる前に同行の方に「好きな曲は?」と聞かれたのですけれども その時答えた曲を、「正常」以外全部やってくれたのですよ。
 最近書くのをサボっていたライブレポをまた書こうと思える、そんなすてきなライブでした。
 五十嵐さんに宮本さんが乗り移っていた気がしないでもないですが。