LIVE REPORT
[ 2003年3月22日 live HELL-SEE@BIGCAT ]
私くさもときのこにとってかれこれ3回目となるシロップライブは、
初めてシロップライブをみたBIGCATにて行われました。
同行のお友達と、ちょうどお昼時にビッグステップへ。ごはん屋さんのフロアで
鮭トロ丼を食し、時間がアホのように余ったのでミューズホールの辺りまでうろついて
ロッテリアでちょっとおやつを食べ、またビッグステップへ行きました。
このとき、私と来たら今日がシロップライブであること、今日五十嵐の生足(違った意味で捉えてはなりません)を拝めることに
自分でも不思議なくらい異様な緊張を湛え、
彼らが発行していた「デラ!ロッキン!」の「テンパリ君」もびっくりなほど私はテンパっていたのでした。
さて、腹ごしらえを済ませ、整理番号順に並んで入場です。ビッグキャットは恐らく2度目ですが、
いやはや、やはり広い。なんばハッチの2段目以降を取り払った感じでしょうか。それよりはせまいのか?
と、今になって冷静に考えてはおりますが、このときの私の緊張といったらなくって、
そりゃあもう一緒にいた人全員に失笑を買うぐらいせわしなかったようです。
とりあえず北田さん前3列目ぐらいに陣取り、しばし談笑。談笑してるのにそわそわ
するくさもときのこ。(赤ジャージ着用)怪しいことこの上なく、しかも今から出てくる
バンドのボーカルを散々おっさん呼ばわりする始末で、まるでダメお君でございました。
開演時間の7時をいくらか過ぎ、ケムリにまかれて暗くなる会場。
お客さんの歓声と共に、ようやくシロップ16gの登場です。
今回は、情報量の少ない北田さんをまじまじと見てみました。
とりあえず、ひげそりあとがごっつ濃いなあという感想を持ちました。
中畑さんは、以前のライブでは髪の毛がサイバーな色になっていたけれども今回は普通に金髪。
一直線にドラムのほうへ歩いてゆきます。
五十嵐さんは、何だかちょっと髪の毛がすっきりした模様。変なパーマやめたの?
以前の「delayed tour」では、ディレイドから数曲しか演らなかったシロップ。
何かのインタビューで「『ライブヘルシー』だけど、ヘルシーからはあんまりやらないかも。」と言っていたのを聞いた
私は、「あの奴め、またディレイドツアーのように別のやついっぱいするのか」と思っていたのですが、
あの奴は何と言うか、やっちゃいました。
黙ったまま、おもむろに始まったのは「イエロウ」。
変わった拍子のこの曲、私などはライブで聞きたい曲ナンバー1でした。五十嵐さんの喉の調子もよく、
中畑さんのドラミングも非常に力強く、何より北田さんのベースが非常にかっこよくって素晴らしかったです。
そのまま続くように始まったのは、「不眠症」。この辺からちょっといやーな予感が脳裏をかすめます。
曲が始まるとそんなことはどうでもよくなってしまって、五十嵐さんの低音ボイスにやられ、「さよなら さよなら」にやられ、
うちのめされて曲が終了しました。
ここで五十嵐さんが喋りだしました。
「こーんにちは。みんな大好き、シロップ16gでーす」
えぇ、くやしいが大好きです。
「えー、イン・名古屋……あっ違う!!」
ものすごくでかくて高い声で、自分の言い間違いを訂正する五十嵐さん。
「違うね、大阪。あのほら、名古屋、通ってきたからさあ……」
あまつさえ、いいわけを始める五十嵐さん。
正直、大好きです。
次の曲は「Hell-see」。美しさとあやしさを兼ね備えたギターリフと、
重々しいリズム隊はまさにsyrup16gの楽曲です。
前回のdelayed tourでは何の予備知識もなく聴いた曲ですが、今回は歌詞も盛り上がりどころも全て把握した上で聞き、
印象も違ったというものです。
続くは「末期症状」。目立つミスもなくファルセットもよく出ていて、良い感じでした。
「すぐ似てる なんちゃって一緒じゃん すぐに慣れちゃってもうピンと来ない もうくだらねぇ つまらねぇ わかんねぇよ」のところを、
「ダリィー、かったりぃー。めェんどクセェー。うっぜぇー。」と、音程もリズムもなくただ愚痴っていました。
余談ですが、このライブのあと、あまりシロップに詳しくない(COPYしか聴いていない)友人は、
「あんまり歌詞とか聞き取れなかったけど、なんか、抱き枕って言ってなかった?」と不思議そうでした。
次にやったのが、「ローラーメット」。みなさんそろそろお気づきだと
思います。こいつらCDの曲順どおりやってやがります。
別にCDの曲順どおりやることが悪いのではありません。
ただ、ヘルシーからあんまりやらないって言ってたジャン皆さん!という、すごく切ない気持ちにかられ、
しかも「いろんなCDからまんべんなくやるだろう」という気持ちで来ていた私は
「HELL-SEE」のあまりに重い楽曲たちを前に、「朝からカツ丼3杯」という気分になったのです。
そのままのペースで、「I’m 劣性」。「バイトの面接で~」のくだりを、
「っていうか、面接行ったら『君は暗いのか』とかさぁ。」と歌わずに完全に喋っておられました。私はそれを見て、
「あぁ、この人、ほんとに言われたんだ。」と、少し哀れになりました。
それに続いたのは、「(This is not) Song for me」。シロップらしい、どこがサビなのかよくわからない構成の曲です。
リリカルなサウンドが途中でマイナー調に変わるところではもう
すっかり聞きほれてしまって、気の利いたネタも持って帰れませんでした。
そしてHELL-SEEきっての名バラード、「月になって」。この曲はライブで聴くと大変やばいです。
鳥肌が立ちます。左足をカケラも上げずに直立でアルペジオを弾く五十嵐さんと正しいリズムで
ベースを刻む北田さん、激しさを排除した誠実な感じのするドラムを叩く中畑さんは是非とも生で見ていただきたいと思います。
次いで「ex.人間」。CDではなんと言いますか少し可愛げのあるような声で歌われていますが、
このライブでは息が多く混じった感じの、諦めたような声で歌っておられました。ですがそんなことよりビックリしたのが、
前奏のところでドラムを叩きながら中畑さんが
「ハァーア。 ハァーア。」
の裏声を担当していたことでした。
少し間があき、五十嵐さんはまた喋りだしました。
「ハァ……(ためいき) まぁ……ね。アレでしょ、まさか、セットリストどおりやるとは、ねぇ。あの、CDの順番どおり。
正直どう?この茶番。」
そんなことより私は、あなたが水を飲む音と吐く息がいちいちマイクに入ってる
のがエロくてエロくて仕方ないです。
休むたびに、「ちゃぷん……はぁ……ちょぷん……」って会場に響き渡っていることに、彼は気付いているのでしょうか。
「やめる? この、茶番劇。(会場、笑う) まあ、ここでね、そろそろ昔の曲も聞きたくなってきたんじゃない?
ここでちょっと、クーデターとかさ」
その言葉に会場が湧き上がり、それと同時に鳴らされる「My love’s sold」。聴きなれたイントロに
会場が盛り上がったとき、突然五十嵐さんはカポを一気に引き下げ、そのまま「正常」に。
突っ込む間もなく歌が始まってしまい、お客さんは五十嵐さんのひねくれ具合にやきもきしながらも
「正常」の低音ボイスにやられちまったのでした。サビの、低い声を絞り出している感はたまらないものがございました。
聴き間違いかも知れませんが、「体は石のように硬く」を「涙は石のように硬く」と言っていたような気がします。
ペースを全く崩さず、曲はどんどん続いて「もったいない」。この曲を聴いて思うのは、五十嵐さんは実に
マイナースケールの使い方がお上手であります。
「悲ーしーくはーなあぁ~い」いや悲しいやんメロディみたいな。
こういう、マイナー調の曲というのは如何せん好き嫌いが分かれるものですが、私はとても好きです。
この辺りで、どこで言っていたか覚えていないMCを書き留めておこうと思います。
何かの曲が終わり、「ありがとう」と五十嵐さん。間髪入れず、呟くように
「あぁあ、今、無意識に関西弁に……なっちゃった」
確かに私は彼が「ありがとう」と言った時に「おやおや、少し関西弁ぽかったな。」とは思いましたが、
そんな、自ら突っ込むほどに気になりましたか。
それからもうひとつ、多分まだ全然セットリストを終わらせていない頃(もしかしたらmy love’s soldを鳴らしたのは
(this is not just)song for meの前で、「正常」前にこれを言ったのかもしれません)、
「じゃあ僕らはこれで。」
と帰る準備を始めちまったものですから、お客さんはこぞって「えぇぇえー!!」と
不満をあらわにしました。
すると五十嵐さんは、
「あのねぇ、その『えぇー!』は、昨日の高校教師のラストで言うべき。」
ごめんそれ見てない。
そして、帰るといったくせに何の突っ込みも許さぬ速さでまた曲を始めたのでした。
さて、アンコール前での最後の曲となったのは「Everseen」。ライブで聴くとやっぱり「あいさつはハローハイこんにちは」に聞こえる、
というのはこの際置いておいて、これはもう実にかっこいい曲ですね。中畑さんのシャウトも非常に男らしく、
北田さんのベースはありえない激しさで、五十嵐さんの声は適度にエロく、最後を締めくくるに十分足るものでございました。
ありがとー、と言葉を残して去るシロップを、会場は拍手で以って再び呼び戻します。
間もなく、中畑さん、北田さん、五十嵐さんの順で再登場。中畑さんたちのときは拍手ないのに
五十嵐のときは皆拍手するの?
黙ったままで、そのまま3人が演りだしたのは何だか古く聞き覚えのあるフレーズ。
ベースがだんだん大きくなってゆき、始まったのは「Sonic disorder」です。
この辺りになると、もうシロップの動向云々がだんだんどうでもよくなってきて、曲にひたることでイッパイイッパイです。
それに続いて、ライブでのおなじみナンバー「生活」。
私は下手側で見ていたのですが、もう五十嵐さん側はすごいことになっており、
人間的でない渦が出来上がっておりました。
「ありがと! また来ます!」
そう言葉を残してまた去るシロップに、観客は「すぐ来い」という思いを馳せて
拍手の手を休めません。やがて拍手が手拍子になって、それからまたしばらく経つ頃、
ようやくダブルアンコールが成立。3人がやってきました。
「あ、ゴダンを……」
スタッフさんにそう伝え、五十嵐さんはギターをエレアコに持ち替えました。
チューニングを済ませ、始まったのは無機質な感じのするイントロが特徴的な「シーツ」。
この曲は非常にコーラスが多くて、「シーツ 洗われてゆくよ」から始まる掛け合いといったら、
もう頭が飛びそうでした。
何故だか少しキョロキョロしたあと、五十嵐さんはしんみりと喋りだしました。
「えっと……、今日はヘルシーツアー……じゃなくてライブヘルシーってことで、
もう、曲順どおり、アルバムどおりやっててまあ遺憾なんですが」
遺憾なんかいという突込みを許さないしんみり感を保ち、
五十嵐さんは話しつづけます。
「でもまぁ、このアルバムは曲順崩せないような気が、したんですよ。だからあのー、
もっと聴きたい曲とかあるかも知れないんだけど、今日はね、もうこういう感じで。
別の曲はまた、今度にね。だからまた来て下さい。」
そう言って、何かの曲のイントロを始めました。聴いたことのないイントロです。
新曲かな、と思っていると、チューニングが合っていなかったようでドラムとベースが
イントロを繰り返す中でチューニングをし、しばらくしてからギターも混ざります。
ゆっくりめのバラード調の曲。何の曲だろうと思っているうち、歌が始まりました。
「嘘から抜け落ちた 裸のような目で~」
何と、「翌日」。今ヘルシーからだけやるって言った所なのになあと
心の中で思いながら、かなりテンポダウンアレンジされているそれに聞きほれました。
もうそろそろ、五十嵐さんのワードマジックにひっかかるのはよそうと思いました。
そしてまたいつもの赤黒ギターに持ち替え、セットリストに入っていない曲をやるつもりなのか
ドラム横にやってきて中畑さんにニッコリ。正直ドキリ。
そして、始まったのはこれもとてもおなじみ、「真空」。もうどうでもいいような五十嵐の崩れまくりのボーカリゼーションが
逆にシロップらしさを演出しています。中畑さんのシャウトも決まり、曲自体がまず長くないですから、
あっと言う間にかけぬけてゆきました。確認できたのはただ、グイグイ上がる一本の足。
そして、五十嵐さんは「ありがとー」と言い、中畑さんはドラム上で一礼を、
北田さんはクールにもそのまま帰っていきました。
今回のライブはほとんどHELL-SEEからその曲順どおりやっていったわけでございますが、
家でCDを聴いているとものすごいテンション下がるアルバムだと思うのに
(いい意味で捉えてくださいませ)、それをほぼ全曲ライブでやることによって
「聴いてる曲はダウンなのにライブなのでアップ」というすごくワケのわからない状況に陥り、
あんな重いアルバムを通しでやろうと思い立った五十嵐さんは絶対マゾだという
わけのわからないことを考えたのでした。
シーツが本当によかった。←一番まともな感想