LIVE REPORT[ 2002年12月21日 delayed tour@心斎橋クラブクアトロ ]

LIVE REPORT

[ 2002年12月21日 delayed tour@心斎橋クラブクアトロ ]


 真冬、夜、しかも雨と、五十嵐さんの呪いではないかとすら思われた コンディションでこの日を迎えました、12月21日。
 ワンマンでのsyrup16gを見るのはこれが初めてになるくさもとは、あずささん(もうハンドルネームはいいですね/笑) に手を引かれ、心斎橋駅から程近いクアトロにやってきました。
 どこで見るのか思案したのち、2段目の先頭に陣取って待つこと数十分。
 会場は明かりを落とし、SEが音量を増すと共に、syrup16gがやってきました。
 以下に、私のそのときの気持ちをまとめてあります。

 あっ、北田さん! 颯爽としているな!早くなんか色々知りたいな!
 あっ、中畑さん!! 髪型変えてるくさいな! すごくかっこいいな!!
 うわあ、左足来たぁ!!

 ごめんなさい、私、一応は五十嵐さんが一番好きなんですけれど、あの時はどうしてだか、 五歩も歩けば届くようなところに五十嵐隆という男がいる、それだけで松本人志のギャグより面白かった。
 となりのあずささんを、「あかん、そこに五十嵐がおるということがそもそも面白い!!!」と よくわからない主張を繰り返して困らせてしまいました。

 全員が所定の位置につき、五十嵐さんはギターを、中畑さんはスティックを、 北田さんはベースをそれぞれ自分の手に持ったとき、その会場――心斎橋クラブクアトロ――の 2段目最前列にいた一人の女子高生が、そこに発生したある一つの問題に驚愕、そして唖然と立ち尽くしました。


 やばい、左足が見えない!!


 私は足レポとかしたかったのになあ、と少し悲しい気持ちになりながら、 それでも暗くなった会場と音量を落としてゆくSEに気を紛らわせました。
 SEがまだ鳴り止まぬうちに五十嵐さんがおもむろにギターをかき鳴らしだして始まったのは、 シロップ楽曲の中で1、2を争うほどの激しい曲調とその痛々しい歌詞が人気の「真空」。
 五十嵐さん、一曲目からそんな飛ばして、大丈夫ですか。 神経が擦り切れると言うか、血管ぶち切れそうな顔しています。
 そしてそれに続いてこれも人気曲、「落堕」が始まりました。前奏をかなり長くとり、 CDに収められているアコギのかっこよさとはまた違ったよさがありました。 テレビで見たライブ映像ではカポを二つほど下げて やや低く歌っていたのですけれど、今回はCDのオリジナルキーで歌いきっておられました。

 落堕が終わり、五十嵐さんは、「……おおさ、かぁ……」とやや色っぽく呟いておられました。 ちょっと、私はおかまバーにでも来たのかな、と思いました。
その後、お客さんと紳士的に触れ合われた五十嵐さん。以下、その様子を台詞のみで表現しています。

お客さん「五十嵐さーん!」
五十嵐さん「はぁぃ。」
別のお客さん「五十嵐さん!」
五十嵐さん「いいえ。違います、僕は。

 ラクダみたいな顔して何を言っているのか?

 彼はものすごく紳士的に、片手のひらを軽く相手側に向け、心持ち頭を横に振りながら、 さらりとこの台詞を吐いたのでした。合格!

 そしてそのちょっとしたおもしろMCは終わり、続いたのはなんと、 「お前これdelayed tourちゃうんかい」と声を大にして言いたくてたまらない「新曲4連チャン」。 一応それらもレポをとりましたが、もしも新曲のネタバレは困る、と言う方は ネタバレ線に注意してスクロールバーをおろしてくださいませ。




– – – – – – – ネタバレ線- – – – – – – – – – – – – – – – – – – –



 曲順は覚えていないのですけれど、それから歌詞の聞き取りには全く自信はないのですけれど、 「明日の天気なんて知らなくたっていい/明日の天気なんて知らなくたっていいんだ/明日になってみりゃわかるんじゃねえの?/ 傘がなくたって死ぬわけじゃないし」という曲が一曲、これは 赤いライトがよく似合う、テンポ速めの曲だったように思います。うろ覚えでございます。
 それから、ちょっと切ないナンバーがひとつ、確か「君は間違ったことはなく/道をあやまったこともない」とか、 「君がいないなら/僕もいないから/そばにいるだけ/ただの言い訳」とか、そんなんだった気がします。 「ただの言い訳」のところで、図星を指されたようでちょっとドキッとしました。 すごく印象に残っている曲です。
 もうひとつ、「テレビの中では/込み入ったドラマで彼女はこう言った/話をしたくはないわ/そこだけ俺も同意した」とかいう 曲がありました。Aメロには「戦争は良くないと/隣の奴が言う」かなんかの歌詞があったと思います。 ちなみに、意味が合うように歌詞に区切りいれていますけれど、 歌では「テレビの中では込み入ったー、ドラマで彼女はこう言ったー」って感じでした。 テンポはミドルぐらいでしょうか。
 本当に順番がばらばらで申し訳ないのですが、(思い出した順に書いています)(うわあ)もうひとつ。 「もったいない/もったいないか/もったいないなら/わかんない/ もったいない/もったいないか/もったいないなら/ちょうだい」という、とっても五十嵐さんらしい歌詞の曲がありました。 確かこの曲がすごくかっこよくって、「あー、五十嵐。」って思った記憶があります。テンポ自体は遅いんですが、 「負け犬」的な激しさがありました。



– – – – – – – ネタバレ線- – – – – – – – – – – – – – – – – – – –




 あぁ、歌詞の聞き取り間違ってたら恥ずかしいな。


 さて、新曲ラッシュが終わってそのまま続けるように始まったのは、冒頭のドラムが問答無用にかっこいい「神のカルマ」。 新曲が続いて聴く方に一生懸命になっていたお客さんたちも、知った曲が流れた瞬間湧きあがり、体を動かしだしました。
 それが終わって、五十嵐さんがマイクを持って言った言葉。

五十嵐「みんな。『生活』って言葉の意味、知ってる?」
お客さん「???(ざわざわ)」
お客さんの中の誰か「名古屋では~~~~~~、続きを聞かせてください!!」
五十嵐「……なんか、もういいや、やめた」

 名古屋で何かがあったお客さんが何を言ったかは聞き取れませんでしたが、 それにしたってひどいな五十嵐さんは。と思いました。 そして結局生活の意味は教えてくれることもなく、始まったのはご想像のとおり「生活」。
 ライブではおなじみナンバーのこの曲、五十嵐さんの、「イエェイ!」というよりはどちらかというと 「エェェェ!!?」に近い叫びをはさみながら、 素敵なテンションで会場が盛り上がりました。「生活」とはこのことだよ、とか言いたかったのでしょうか。
 もちろん、この曲でおなじみの「すごい顔でギターソロ」もしっかりと見せてくださいました。

 そこで会場が汗臭くなってきたので、クールダウンの一曲「生きたいよ」。
 個人的意見で申し訳ないのですが、私はこの曲が大好きでして、どれくらい好きかと言うと 犬の肉球ぐらい好きでして、聴けて幸せです。最後の五十嵐さんの 「フフゥフッフッフゥー」の裏声が適度にむかついて、 本当に好きなのでございます。
 「生きたいよ」で「生きろ、五十嵐!」とか思った後には、delayedより「Are you hollow?」。
 「それでも傷つくのは そう 言われて傷つくようなこと」と歌詞を変えていて、いいなあと思いました。 それより気になるのは、この歌のゆったりしたギターで五十嵐さんやっぱりすごい顔だったことです。 だけれど、彼は歌うときは目を閉じてひたりきって唄っていますから、交互に訪れるそれに私は笑いを禁じえませんでした。

 ここで、また一曲新曲がとびだしました。
 もう一度さっきと同じことをしますから、ネタバレ線にご注意ください。




– – – – – – – ネタバレ線- – – – – – – – – – – – – – – – – – – –



軽快で激しいギターカッティングから始まったこの曲、とっても早口に、 「挨拶はハロー・ハイ・こんにちは」とか、「つまんないから帰って」とか、 いかにもクーデター時のsyrup16gを髣髴とさせる攻撃的な唄でした。 テンポはだいぶ早かったです。系統で言うと、落堕とdrawn the lightと混ぜて テンポアップした感じ、いやちょっと違います。
 あっ、この曲のテンポ、ナイナイとかがよく言っている「のーんでのーんでのんで、のーんでのーんでのんで、 のーんでのーんでのんで、飲んで?」っていう唄によく似ています。



– – – – – – – ネタバレ線- – – – – – – – – – – – – – – – – – – –




 さて、新曲のお披露目は終わって、ここでちょっとしたMCです。

五十嵐「この中に、頭が悪い人はいますか。」
(お客さんは、手を挙げたり、笑ったりしています。)
五十嵐「頭の悪いやつはおらんかアァァア」
(お客さんは、突然の五十嵐さんの変貌に爆笑しました。)
五十嵐「……。なんだそりゃ。(苦笑)」

 五十嵐さん、「一人ボケ突っ込み」を会得していたとは、さすがです。

 五十嵐さんが「おらんかあぁぁ」と言った時本当に殺られると思ったことはこの際置いておいて、 そこから始まったのは、イントロのギターサウンドが決め手の「天才」です。今回も五十嵐さんはしっかりと 「後から 向こうから 端っこから陸海空」を間違えてくださいまして、でも微妙に目立たない間違いだったので ちょっとおしいな、と思いました。
 「天才」を終えると、またMC。

五十嵐「……あぁー。あぁ。あー、いい空気だぁ。いい空気だよ。」

 お客さんは、このライブの空気が素晴らしいものであると五十嵐さんが絶賛しているものと思い、 拳を挙げたり拍手をしたりして応えました。だけれど、違ったのです。



五十嵐「いい空気。ほんといい空気だ……自然って、いいなぁー





 五十嵐がボケた?




 私が初めてシロップのライブに行ったのは、9月21日、大阪 BIG CAT。
 ほぼ無言でトリをこなす彼らを、そっと見守った秋。
 初めて見た左足も、くしゃくしゃの弾き顔も、輝いて見えたあの日。

 まさかこんな人だったなんて。


 好感度は、どちらかと言うと上がりました。


 そのあと、彼はこうも言いました。

「もう、酸素だらけだよね。すごいよ。もうお前ら、酸素吐くな! ……二酸化炭素。二酸化炭素、吐くな。」

 多分、一番二酸化炭素吐いてるの五十嵐さんだと思います。なんて、言えない。

「……んで、僕は華麗に……華麗に、生まれ変わります。」

 そして始まったのは、名曲中の名曲「Reborn」。2番の歌詞を「期待して 諦めて/それでも臆病で/ 本当の気持ちだけが/遠回りになっていくよ」と変えていたのを聞いて、「死んでいく」と書かずに 「生まれ変わっていく」と書いた五十嵐さんはすごいな、左足とか言ってごめんなさい、と思いました。

 「ありがとう」と言葉を残してハケていくシロップ16g。拍手は鳴り止みません。それはだんだん手拍子になり、どんどんテンポを増し、 増しすぎるとどこかでまたゆっくりにする人がいて、すごい合理的なことになっていました。
 まだか、まだか、まだか、とステージで働いておられるスタッフさんを急かすような手拍子の中、 ようやく戻ってきました、syrup16gが。
 沸く会場。五十嵐さーん!と言う声にはあまり反応を示しませんでしたが、「シロップ!」という か細い呼び声に五十嵐さんは「16g。」と応えました。「山」「川」「豊か」を思い出しました。
 そして、(多分)ほぼ無言のまま始まった「drawn the light」。イントロの「ジャカジャー、ジャカジャー、」という ギターとタムの音が素敵なドラムが聞こえると観客は一斉に沸き立ち、一段目のお客さんなどバンプ顔負けに ノリノリでした。
 曲を終え、一瞬の静けさのあとは「無効の日」。この曲のベースはもう、本当に美しいなあと思います。 というか、この曲自体がシロップの曲の中でも5本の指に入る美しさだと思います。 音程を少し上げて唄っていたかな、と思いました。
 そしてもう一つ、「フリースロウ」より「Sonic disorder」。「クスリをもっとくれよ」のあとに一瞬 ベースだけになるあのシーンがとても好きで、そのときは目をつぶって聞きながら頭を振っていました。( ちなみにそんなに激しくヘドバンとかしてないです/笑)

 そして、再びシロップは去っていきました。しかし、誰一人として帰ろうとはしません。 ひたすら手を叩き、彼らがはけていったほうを見つめて彼らを待ちました。
 そしてしばしの後、再び現れたシロップに会場は喝采を送ります。ダブルアンコールです。
 無言の五十嵐さんに耳を向けるべく再び静かになった会場に、五十嵐さんは両手を広げて言いました。

「みなさん、はじめまして! 僕たちはsyrup16gです。僕たちのコンサートにようこそ! 今から2時間弱のコンサート、楽しんでってね!」

 もう、私、syrup16gが大好きです。

「さて、トイレ行きたい人は先に行って。」

 と言う割に間髪いれず始まったのは「coup d’Etat」、続いて「空をなくす」。
 ライブでクーデターを聴いたのは初めてです。無意識につい、 「声が聞こえたら 神の声さ」のあとに続く「イエェェェエ!!フーゥ!」の「イエェェェエ!」を叫んでしまいました。
 続いた「空をなくす」では、五十嵐さんがやっちゃいました。

「今更 何を叫ぶよ 全ての意味を 全て▼※□間違ーえーたアァァアア!

 何で間違えたって唄うの。


 そんなこんなで空をなくすは終わり、最後の五十嵐言葉。

五十嵐「ねえ、『汚れたいだけ』って英語で、あぁー違う英語じゃねえや。 あの。えぇー……と、大阪弁。大阪弁でさあ、何つうの?」
お客さん「……(笑)」「かわんない……」「かわらん……よな?」(ざわざわ)
中畑「(笑)……大阪弁……」
五十嵐「(笑) じゃね、これで最後。汚れたいだけ。みんな楽しんでってね。ありがと!」

 そして始まった最後の曲。キーボードのようなギターが特徴的な「汚れたいだけ」で締めくくりです。 この曲はやばいです。「探してみたってもう/見つけられるのは自分の手」とかやばいです。 ズキューンってなりました。


 そして彼らは、今度こそ本当に去っていきました。
 去り際に中畑さんは前に出てきて深くお辞儀をし、それを見た私は、このオットコマエめ!と思いました。 彼はきっと本当に真面目な方なんだろうなあと思いました。


 やばい、このレポときたら、ほとんど五十嵐レポじゃないですか。