ネットでの芸術鑑賞がもっと育ってほしい話

20代ぐらいまでは、ネット上と現実をほぼ完全に分けて考えていたのです。

その時、インターネットはまだ「パソコンや回線を持っている人だけの秘密倶楽部」みたいなところがあったような気がいたします。
インターネット自体が、鍵のかかったSNSグループであるかのような。
そのような錯覚が、私にはございました。

今、ぜんぜんそんなことないですものね。
ネット環境あるのがふつう、みたいなところありますものね。
仕組みや流れなどなど難しいことはよくわかりませんが、なにしろ、閉じた世界ではなくなりましたよね。

というわけで、いつまでもウェルカムトゥアンダーグラウンドのつもりでいるのも何だか微妙だなと思い、私もナウなヤングに負けじと、ここ最近はわりとオンラインとオフラインを統合していくような動きで、モジョモジョと這い回っております。

いまは、どうしてもこっそり言いたい本音がある場合は「ネットと現実」っていう分け方ではなくって、「鍵と公開」っていうかたちで分ける必要がある時代ですねえ。

私などの場合は、何かに怒ったり納得がいかなかったりして「お前ええかげんにせえよ」のモードに入ってしまうと、本音も建前もへったくれもなくなって全部言ってしまいがちな性質があるので、SNSのたぐいは特に精々気をつけて使わないといけない人種です。。。

それから、また創作の話になってくるんですけれど、「ネットでは本質はつかめない、なんと言っても生でなくては」っていう印象がもう少しガッツリ変わっていってもよいのではないかなあ、とも思っています。

「自分の作品をどう見てもらいたいか」っていう考え方であれば、もちろんそれはやっぱり生で見てもらいたいんです。
そのほうが、迫力や、伝えたいことがドンと伝わりやすいような気がするから。

ただ、自分が見る側だとして考えたら、ネットってもう、ものすごく素晴らしいものなのです。

私、恥ずかしながらたいへんな出不精でございます。
電車や人混みに突入することや、人と会ってのコミュニケーションなども、その都度その都度、たいへん大きな決意と気力が必要なのです。

そうしますと、ライブに行く・展覧会へ行く等々の動き出しが非常に鈍くなってしまい、大好きでたまらないバンドのライブに一大決心でようやく年イチ行ける程度で、あまり満足に芸術に触れることはできませんでした。

ところがネット上では、人も気にせず、電車に乗ることもなく、家を出る必要もなくたくさんの作品に出会うことが出来ます。
つまり、これまでのような「芸術には直接関係しない抵抗感」がない状態で、芸術に触れることができるのです。
これを「ネット上でなんて」と扱われてしまうと、私としては困るのです。

もちろん、私もつくる人間のはしくれですので、画面で見る作品と実際に生で見る作品とではイメージが変わってくることは認識いたしております。

これは、「生でなくてはダメなんだ。ネットでなんてダメだ」ではなく、「ネットと生身、それぞれどのように特化・進化させてゆくか」という今後の課題・ひろがりの可能性として捉えるべきではないでしょうか。
その理由は、単純に「得てして、『いったん否定』より『いったん肯定』のほうが、あとでいい広がりかたをするから」。

自分と押し問答しながらしばらく生きてみましたが、やっぱり私には、「フラッと出かける」というのは難しいのです。
その自分の特性を考えると、ネットという可能性をより一層大きいものにしたいという感情がございます。

この人の作品をどうしても生で見てみたい・聴いてみたい、そのように強く感じるきっかけとしてのネットの活用、という考え方もございますし、
また、ご病気や障害、多忙、遠方などでどうしてもライブや展覧会などへ行くことは難しい方も、この「家で参加する」が技術の上で可能になってきた時代の流れは、うれしい変化なのではないかと想像するのです。

そうなると、音楽でいうとライブハウスがキツくなりそうに思いますけれど、今までライブハウスに足繁く通っていた勢がはたして配信をすることによって「家で見られるんなら行〜かな〜い★」ってなりますかね?
今まで行けなかった、取りこぼされていた層が喜ぶだけで済むような気がするんですよ。
ライブハウスはドリンク代の代わりに配信閲覧料をいくばくか取っていいと思いますし、応援したいバンドや潰れてほしくないライブハウスがいい配信をしたらリアルタイム投げ銭ができるっていうのもアリじゃないですか?

「選択肢」の時代になったな〜と思うので、生で見たい人は生で、家で見たい人は家で、どっちが本物とか偽物とか言うのをやめて、ただ好きな方を選ぶ。提供する側も、ちゃんとお儲けしつつお客さんにも得があるように工夫を重ねてどんどんひろげていく。っていうのはどうでしょうかと。私はいいと思うのですが、と。

考えだけは湧いてくるけれど、根っこがお馬鹿なので、この話がどこまで現実的なのかはよくわかりません。

でも、こういうの大手がやってくれたら、シロップのツアーなんて絶対バーチャル全通と投げ銭したいですよ。私は。もちろんチケット代をとってくださいよ。

また。