物事をフラットな目で確認したあとに都合よく捉えると結構うまくいく気がする話

またタイトルでぜんぶ言ってしまった。

たとえば、「私は絵が下手だ」という人がいるとするじゃないですか。
で、実際に、その人はデッサン力においてやや他に劣ると仮定しましょうよ。

この時、その人が別に絵を描くのが好きでない場合は、そのまま「絵が下手」と捉えていいと思うんですよ。
その場合は「絵が下手」という事実が自分自身のステータス感の低下につながらないので。

私が言いたいのは、「絵を描くのが好きで好きでしょうがない、楽しくて仕方ないにも関わらず、画力の点で他に劣る」というパターンの場合なんですよ。

絵が大好きで、絵をじょうずに描きたいと思っている人が「私は絵が下手だ」というのは、これは、自身をじょうずに肯定できていない状態だと思うのです。

じゃあ、だからといって、実際にデッサン力において劣るにも関わらず「私は絵がうまいです、画力はあります!!」と言ってしまうのは、この場合うそになります。
これは自分を正しく見つめることができていない、いわゆる「調子に乗っている」状態ではないでしょうか。

まず、フラットに今自分がどのような状態であるかを見つめる必要がたぶんありますよね。
私情を抜きにして、自分の絵はどうで、どのような特徴があり、どこが思い通りにいっていてどこが思い通りにいっていなくて、どこが好きでどこが嫌いで、自分の中ではどうで、他と比較するとどうで、本当はどうなりたいのか、またそれとは別に自分は今後どうなるのが自然であるか。

で、「自分は、画力があまり高くないな」と、まず判断することはたぶん必要ですよね。
そこから、「じゃあどうするのか」という方法の話になってくると思うのです。

ここでね、昔から、「じゃあデッサンを死ぬほど努力して稽古して、寝る間も惜しんで、指から血を噴くぐらい描いて描いて描きまくって、うまくなろう」が美しかったじゃないですか。

でもねー私ねえ、どうもそれ、楽しくないんだよなあ。

怪我なんかしないに越したことはないですし。
夜は寝たいし。
酒も飲みたいし。
ねこの世話もあるし。

「どうしても画力を上げたい、とびっきりレベルの高い絵が描きたい、それが自分の生きる意味だ」というなら、それは正解の方法論なんでしょうけど……。

私は、違うやり方をいまのところ選んでいます。
「いいところも悪いところも、肯定も否定もしないで全部そのまんま受け入れて、そっから、それらを都合よく解釈する」
という方法です。

一般的には「デッサンが下手」と表現するところを「独自の解釈で描く」と言い換えてみたり、あとはそうですね、「勉強不足で知識が少ない」であれば、私なら「セオリーにとらわれない自由な描画」と表現するかもしれません。
それから、「線が雑で……」と謙遜する方もちょくちょくおられますが、「情熱のままに切りっぱなしにした、その切り口の妙味が映える」のような言葉でポジティブにもっていくことはじゅうぶんに可能です。

これを、逆に否定的に表現するのが「批判」かな。と思っています。
やってることは同じで、表現方法が違う。

これを見て「こんなの、できないことをごまかす言い訳じゃあないか」となってしまうパターンも往々にしてあるわけですけれども、まあ、正直、そのとおりです。

でもね、こっちにも言い分がありますよ。

嘘も真にして過大広告するんじゃなく、まずいったんフラットに全体を確認した上で、それらの事柄に対して意識的に「肯定的表現」をするのですよ。
自分に対して嘘を言っちゃいけない。嘘で褒められても嬉しくないでしょう。
本当のことを自分に言ってやらねばなりません。
でも、必ずしも厳しく罰する必要はないんじゃなかろうか、ということです。

できないことを必死でできるようになっても、それがもともと得意な人にはかなわない。
これは、シビアな芸術の世界では、なかなか巻き返せるものではありません。

であれば、自分がもともと持っている特性にすてきなブランド名をつけてやるほうが、効率も気分もいいのではなかろうか。というのが私の考えです。

「まずフラットに自分を見つめる」を飛ばしたら絶対にだめですよ。
ここを飛ばしたら、それはもう、性格の悪い自己愛さんの出来上がり。
この方法は、まず、自分では認めたくない自分の嫌な部分も全部過不足無く受け止めなければ話にならんのです。

だから、うつ状態の人がやると全く意味ないとおもいます。
「過不足なくフラットに自分を見つめる」ができない状態ですからね、うつ状態というのは。たぶん。

この方法だと、「下手くそだし、ファンは自分しかいないけど、自信はあるよ」が成立するんですよ。
誰かに持ち上げてもらわないと維持できない自尊心、というのではなくて、けっこう何か、すごくシンプルに楽しい感じがしますよ。ものづくりが。

商業の人だとまた考えないといけないことが色々あるだろうから、これまた話が変わってくるのだと思いますねえ。
私は趣味に毛が生えたようなもんだから、のんきなこと言ってられます。

やっぱりね。
楽しいのが一番よ。
私は、そう思いますよ。