いや、ふつうにキラッ☆みたいな表情の絵も好きなんですよ。
それはそれで好きなんです。
なんですけど、
「なんか笑い方へたな人」とか、「現代において主流の観念では魅力的とされていない体型の人」とか、そういう絵が、特段に好きなんですよ。
私がよく描くのは、「笑うときに口角を上げたモデルさん的な笑顔ができない人」です。



こういったような。
私は思うんですけど、人間ってほとんどの人が顔は左右非対称だし、そうそう現代らしい理想的とされるスタイルのひとばかりではないし、みんながみんな歯列矯正などできるわけでもない。
でも、お化粧とおなじように絵でも、判で押したような美形で描かれることが多いじゃないですか。
絵は夢の世界だから。うつくしいものが描かれる。当然のことです。
でも、なんかこう、なんていうんでしょう。
もう小難しい理屈じゃないんですよね、私の言いたいのは。
シンプル。
非常にシンプル。
よくない?
小綺麗に見栄えを気にした笑顔じゃない、全力笑顔の人とか、すうごい、よくない?
グッとくるんですけど、私なんかは。
いわゆるキメ顔じゃなくて、洗練されていない、垢抜けない、いわゆる「イモくさい」そういう表情、造形、すっごい好き。
これはもう、趣味嗜好。性癖。そういうたぐいのものだと思います。
そういう、見栄え重視ではない表情というものには、なんというかこう、バックグラウンドやストーリーが見えるわけですよ。
見栄え重視の絵は、絵としてのうつくしさ・かわいらしさ、そういうものがみどころじゃないですか。それもいい。それを見るのも好き。
けれども、やはり、私の中のいちばんとしては「より人間くさい、整えられていない表情、造形」を推したい。
私はねえ、絵の向こうはどんな世界なのか、いろいろ想像するのが好きなんですよ。
温度や湿度を感じたいし、風を頬で受けたいし、実際にその人と対峙するときのようにその人のことを想像したい。
いま、どんな気持ちなんだろうか、どういうことがあってこの顔なんだろうか、どんな思いでいるんだろうか、そういうのをいろいろいろいろ考えてみたい。
それってとっても楽しいことですから。
けっきょく、「洗練されたものも、されていないものも、両方描けるようになりたい」が結論なんですけどね。
そりゃそうですよ。描けないより描けたほうがいい。
でもやっぱりすきなのは、イモっぽい感じだな。
イモになりたい。